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「ヘンリー八世」

彩の国シェイクスピア・シリーズ「ヘンリー八世」

 日時:2022年10月16日(日)12:30開演

 会場:北九州芸術劇場大ホール

 

 2年半前、チケットを買っていたのに、新型コロナのために公演中止になり、観ることができなかった。そのリベンジ公演ということで、シェイクスピア全作品の上演を見ることを目標としている私としては絶対に観たかった。というわけで、仕事に優先して観劇。

 

 ヘンリー八世といえば、高校時代に友人が「不倫して、奥さんと離婚したいがためにローマ・カトリック教会を離脱して、英国国教会を作った人。」と、教えてくれたのを覚えている。たぶん、世界史の授業で私も習ったと思うんだけど、私は全く世界史に興味がなく、授業をまるで理解していなかったので、知らなかった。のちに大学の英文学の授業でシェイクスピアを読むにあたり、この辺のイギリス史の知識が全く頭に入っていなくて苦労した。今もシェイクスピアを観るたびに勉強のし直しだ。ちなみに、ヘンリー八世とその妻・キャサリンの娘が、プロテスタントの過酷な迫害からブラッディ・メアリーと呼ばれたメアリー一世。「ウォッカをトマトジュースで割ったのがブラッディ・メアリーってカクテル」と教えてくれたのも友人。

 冒頭、ベッドで女性を抱くヘンリー八世(阿部寛)の鍛え抜かれた肉体美にドキドキ。

 国王の寵愛を受ける枢密卿・ウルジー(吉田鋼太郎)の陰謀によって、バッキンガム公爵(谷田歩)は国王の不興を買い、無実の罪で死刑に。谷田さんは今までノーマークだった役者さんですが、吉田鋼太郎さん死刑になる前に連行されるシーンでの熱演がすごかった。全身を震わせて怒りをあらわにし、大きくあいたシャツの胸元が見る見るうちに汗ばんでいった。ウルジーの方を向いて身体を折った時、胸元から十字架のネックレスがこぼれた。光っていたのは汗だけでなく、ネックレスのチェーンだった。この小道具で、バッキンガム公爵は信心深い人だったのだなぁと思う。

 その様子を間近で見ているノーフォーク公爵(河内大和)をはじめとする貴族たちは不安を募らせる。

 前半最後、キャサリン妃の愛と孤独と悲しみに号泣。私は結婚したことはないけれど、愛する人からあんな形で別れを告げられたらどれほど絶望することか。それでもキャサリン妃は王家の血をひくものとしてどこまでも気高く、強く、美しかった。

 ところで、金子大地くんはまだ登場してないよね?

 

 休憩時間にパンフレットを買って、人物関係図を確認したら、ヘンリー八世って、エリザベス一世のお父さんじゃん!じゃあ、後半から最後にかけては、間違いなくイギリス王室バンザイ的な展開になるじゃん。

 案の定、後半は各登場人物のエピソードが中心で、あまり物語的進行はなかった。

 ようやく金子大地くんが登場。かっこいい!意外と背が高い!間近で金子くんを見られて嬉しかった。

 ウルジーが失脚する場面は、吉田鋼太郎オンステージ!鋼太郎さんは演出も担当しているけど、いつ見ても絶対に自分がたっぷり芝居する見せ場を作っていて、役者やなぁと思わされる。

 エリザベス一世の誕生を祝うシーン。この作品が上演されたとき、すでにエリザベス一世はこの世を去っており、述べられるせりふは女王の生涯を称えるような内容だったのだけれど、そのセリフはそのまま先日亡くなったエリザベス二世を称える言葉に聞こえた。

 シェイクスピアのセリフは今から400年以上前に書かれたものでありながら、今の世の中にちゃんとつながっている。それは、今も400年前も人間はそんなに変わってないということかもしれない。

 音楽はサミエルさんという方が、2階建てになっている舞台のセンターで生演奏。キーボードかなと思っていたのだけれど、「廃材と割り箸、ピアノ線を使て世界に一つだけの木製弦楽器『割り箸ピアノ(幻ピアノ)』を自ら考案・製作。19年からは7代目『ピクシーコード』で活躍する。テーブルトップ式のピアノを両手で弾きながら、足元では廃材のドラムキッドで」リズムを奏で(パンフレットより)」ているそうで、あの不思議な音色は、そんな楽器から奏でられていたのですね…。

 

 彩の国さいたま芸術劇場のシェイクスピア全作上演シリーズのうち、コロナ禍によって全公演中止となった「ジョン王」が、この冬に上演されるらしい。!!!年末年始にシアターコクーン!!仕事を納めたら速攻上京して、いいホテルで乾杯して、ぐっすり寝たら「ジョン王」だ!チケット買った。楽しみ!

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