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「Le Fils 息子」

「Le Fils 息子」

 日時:2021年9月18日(土)18:00開演

 会場:北九州劇術劇場中劇場

 

 9月10月の土日は仕事で休めない、はずだった。観たい公演はたくさんあるけど、どうしても観たくて、かつスケジュール的に行けそうなやつだけに絞ってチケットを買った。しかし、緊急事態宣言の発出、さらに延長のせいで仕事の予定が軒並み後ろ倒しになり、土日祝が全部休みになった。だけど、いろいろ突発的に起こっていて、ギリギリまで予定が立たずに迎えた3連休。台風も過ぎ、落ち着いた土曜日、早起きしてのんびりしていた。思いついてトリアスに映画を見に行こうと思ったが、1回めがなんと朝8時40分からで気づいた時には間に合わず。昼の2回目見に行くかーとぼんやりネットをチェック。あ、「Le Fils 息子」は今日かー。当日券、まだあるのかー。昼の部は間に合わないけど、夜の部なら行けるかー…。行くか…。と、さんざん悩んでチケットをポチる。

 岡本健一さんが好きだ。しかも今回は、実の息子である岡本圭人くんと親子役で共演とのことで、観たいと思っていた。

 

 いやー、見に行ってよかった!岡本健一を堪能。

 過去、私が見た岡本健一さんは、チャラい若者@近代能楽集とか、いかれたジジイ@ロッキーホラーショーとか、狂気の浪人@陽だまりの樹とか、剃髪の杉田玄白@非常の人なんぞ非常にとか、性格や見た目が特異なキャラクターばっかりで、しかもそれらを非常にうまく演じていらっしゃって、ジャニーズなのに(失礼)すごく力のある舞台俳優さんだなと思っていた。今回、私にとっては初めて実年齢に近い普通の男性の役。ポスターのお顔にも年齢を重ねたいい男の色気がにじみ出ていて、非常にかっこいい。息子の圭人さんもジャニーズ。親子でジャニーズで活躍してるって、いそうでいないんじゃないですか?しかも圭人さんは、Hey!Say!JUMPを脱退して、役者修行のためにアメリカに留学していたとか。ご両親は離婚されているそうですが、完全にお父さんの後を追いかけている様子を見ると、お父さんのことが大好きで、お父さんに憧れていて、お父さんのようになりたい、もしくはお父さんを超えたいと強く思っているように見えます。そんな二人が親子役で共演って、どうなるんだろう。

 

 ものがたり

 「何かを変えたい。でも、どうしたらいいか分からない」

 17歳のニコラは難しい時期を迎えていた。両親の離婚により、家族が離れ離れになってしまったことにひどいショックを受けて動揺し、何に対しても興味が持てなくなってしまっていた。噓を重ねて学校にも行かずに日がな一日、目的もなく一人で過ごしていたところ、学校を退学になってしまう。父親(ピエール)は新しい家族と暮らしていたが、母親(アンヌ)からニコラの様子がおかしいことを聞き、なんとか彼を救いたいと、離婚後に距離を置いていた息子と、向き合おうとする。生活環境を変えることが、唯一自分を救うことだと思えたニコラは、父親と再婚相手(ソフィア)、そして年の離れた小さな弟と一緒に暮らし、新しい生活をスタートさせるのだが…。悩み、迷い、傷つきながら自分を再発見していく絶望した若者の叙事詩。

 

 ニコラのような若者を、たくさん見てきた。

 きっかけは両親や家族のことだったり、勉強だったり、友達との関係だったり、日々の生活の中で過度に自分を責めてしまっていたり、本当にいろいろだけれど、ニコラと同じように何に対しても興味が持てなくなって、学校にも行けなくなって、日がな一日目的もなく過ごしていて、そうかと思えば押し殺した感情をぶつけるように暴れてみたり。そしてみんな、ニコラとだいたい同じようなことを言った。

 彼らの親もいろいろだった。子供を責めたり、周囲を責めたり、途方にくれたり、子どものために奔走したり。

 私自身はニコラの親の年齢だけれど親ではない。親の気持ちよりもニコラの気持ちに近いような気もするけどもうニコラみたいに繊細で傷つきやすい時期をとっくの昔に通り過ぎてしまって、あの頃どうだったかなんてすっかり忘れてしまっている。だから、完全に第三者の立場で冷静に観た。

 ピエールはなんだかんだ言ってニコラのことをとても愛していて、だからニコラのためを思っていろいろ言ったりやったりする。ピエール自身も父親に対する複雑な思いを抱えていて、それは彼のニコラに対する接し方にも無意識に大きく影響している。母親のアンヌもニコラを愛していて、だからこそ変わってしまったニコラを目の前にしてどうしたらいいのかわからなくなっている。ピエールの再婚相手であるソフィアだって、ニコラのことが嫌いなわけじゃないし、できることはしてあげたいと思っている(でもやっぱり自分の息子の方が大事だし、ピエールがニコラにかまいすぎるのはちょっと嫌)。

 誰も間違ってない。誰も悪くない。だけど、第三者の目から見ると、それはまずい。非常にまずい。

 だから、ピエールがニコラを病院から連れ出して自分の家に連れてきたとき、この後ニコラがどんな選択をするのか予想がついて、びくびくしながら銃声を待ってしまった。

 医者、この状況をなんとかできるのは第三者である医者しかいないんだから、もうちょっと何とかしろよ…と言いたいが、医者も間違ってない。全然間違ってない。ちゃんと正しい。だから、なるべくしてなったニコラの運命がとても悲しい。だれも止められなかった。悲しすぎる。

 

 岡本圭人くん、繊細な演技が要求される役を好演。母親役の若村麻由美さんもものすごく素晴らしい女優さんだし、演技派の父と母に挟まれて、圭人くんはとても学ぶことが多かったことだろう。今後、どんな素晴らしい俳優になっていくのか、さらなる成長を楽しみにしたい。

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