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「お探し物は図書室まで」

青山美智子「お探し物は図書室まで」

 再び、職場の人におすすめされた本。隣の席の人が「あー、それ私もおすすめされて読んだー。まぁ面白かったけど」と言っていた。

 確かに、面白かった。

 

 あらすじ 

 とある町の、小学校に隣接したコミュニティーセンター。そこではパソコン講座や囲碁の会などの趣味の講座が開かれ、図書室も併設されている。図書室には不愛想だが有能な司書・小町さんがいて、やってきた人にお探しの本プラス意外な本を紹介してくれ、ついでに小さな”付録”をくれる。

 

 悩める住民たちが、司書のおすすめしてくれた本をきっかけに、自分と向き合い、何かに気づいて、新しい一歩を踏み出す。それぞれが、”忙しい”とか”上手くいかない”とか、いろんな理由でぐずぐずとくすぶりながら日常を送っている中、本との出会いはほんの少し彼らの背中を押してくれる。小さな町のコミュニティセンターやショッピングセンターや書店や会社で、登場人物たちは出会ったりすれ違ったり。

 久しぶりに本を読んで泣いた。

 登場する人たちはみな、なんだかちょっと日常に不満を抱えていて、それは私もおんなじで、別に”不幸”じゃないけれど、”幸福”とも感じられない毎日を送っている。本当はどうしたいのか、なぜだか本はその答えを見つける手助けをしてくれる。

 図書館司書さんは、必ずしもその人が気に入りそうな本をおすすめするわけじゃないんじゃないかと思う。”てきとう”に”インスピレーション”で選んでるんじゃないか?何なら、小町さんは(たぶん)思いつくままに羊毛フェルトの作品を日々量産しているように、自分の気に入っている本を思いつくままにリストに追加してるだけじゃないか?

 それでも、おすすめされるがままに人は本と出会い、勝手に自分の悩みと向き合って、勝手に解決策を見つけて前に進んでいく。本は確かに他者であり、たとえ一人ぼっちで家に引きこもっていても、新しい世界と出会わせてくれる。しかも決して私を傷つけたりしない。そこに書かれている言葉を自分に都合よく解釈できるし、そこから受け取ったものをこんなふうに表現することもできるし、それを誰かと共有することで誰かとつながることもできるかもしれない。

 

 そういえば、学生の頃、編集者かライターになりたいと思っていた。当時から激務だと言われていた出版社での仕事が私に務まるとは思えず、超難関の出版社を受験する気力も勇気もなく、(今、ここに書くまですっかり忘れていたが)中小の出版社を何社か受験するもやっぱ無理だと早々にあきらめて、半分妥協で(しかし半分は本気だ)今の仕事をやっているわけだが、もしもあの時出版社に就職していたら、この出版不況の中、出版社は会社的にも大変だと思うし、それ以前にたぶん仕事自体続いてないと思う。どっちがよかったとかあんまり思わないし、なるべくしていま私はここにいるんだと思う。そんなことを考えるのもこの本を読んだせいかな。

 

 装丁も素敵。表紙には本と作中にも登場する羊毛フェルトの作品。よく見ると、背表紙の下の方に図書館の本に張られている分類記号のシールが!

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