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「大地(Social Distancing Version)」

PARCO劇場オープニング・シリーズ「大地(Social Distancing Version)

 日時:2020年8月2日(日)12:00開演

 会場:有料ライブ配信(アーカイブなし)

 

 パルコ劇場が改装され、新装後のオープニング・シリーズの一環で三谷幸喜さんの演目が3作連続で上演されるというニュースはずいぶん前に聞いていた。三谷作品は最近、福岡に来てくれた「国民の映画」ぐらいしか見てないな…だってチケット取れないんだもん!今回も超豪華キャストにどうせチケット取れないし~と思っていた。しかし、新型コロナウィルスの影響で舞台のネット配信が行われるようになり、今作もライブ配信が行われるという。…が、どうせ見られないと思っていたのですっかり忘れていた。配信なら当日でも買えるし、と油断していた。気づけば東京公演の配信はあと3回になっており、昼は仕事して、夜見るか、と思ってサイトにアクセスした8月1日17時、すでに公演は始まっていた…18時からじゃなかったのか…?

 残るは8月2日、東京千秋楽のみ。忘れないようにアラームをセットして、タブレットの前にスタンバイ。

 開演。

 

 

 

 

 舞台上には升席のように仕切られた、八百屋舞台のように傾いた空間。各区切りごとにベッドやテーブルが置かれている。後でわかったのだけれど、あの装置は役者同士の距離を保つために工夫されたものだったらしい。違和感なく見ていたけれど、”Social Distancing Version"というのは、配信もある公演だからというだけでなく、演出も社会的距離を保つことを意識し作られた作品ということらしい。

 冒頭、濱田龍臣くんが語る。龍臣くんは、「龍馬伝」で坂本竜馬の少年時代を演じた時から思っていたけれど、友人のちかちゃんにとても良く似ている。したがって、ちかちゃんにそっくりなちかちゃんの息子ちゃんにそっくりだ。大きくなったね…。

 ものがたり

 とある共産主義国家。独裁政権が遂行した文化改革の中、反政府主義のレッテルを貼られた俳優たちが収容された施設があった。
強制的に集められた彼らは、政府の監視下の下、広大な荒野を耕し、農場を作り、家畜の世話をした。
過酷な生活の中で、なにより彼らを苦しめたのは、「演じる」行為を禁じられたことだった。
役者としてしか生きる術を知らない俳優たちが極限状態の中で織りなす、歴史と芸術を巡る群像劇の幕が上がる!

(公式サイトより)

 三谷さんの芝居は、東京サンシャインボーイズの解散後からしか見ていないのだけれど、もっとお気楽で、観終わった後に時に何も残らないただただ楽しいお芝居というイメージがあった。しかしいつの頃からか、重いテーマを扱うようになり、何とも救いのない終わり方をぽんと投げられて終わるようになった。新撰組も、真田幸村も、どちらかと言えば悲劇のヒーローたちだ。そういう題材を好んで描くようになった三谷さんの新作ということで、今回もたぶん軽いタッチのウェルメイドな芝居ではないだろうと覚悟はしていたが、やっぱり後味が悪かった。たぶん三谷さん的には「そう?」って言うのだろうけれど。 

 今回の芝居は、三谷さんの俳優論であり演劇論であり、劇団論。構想自体はコロナ禍以前からあったもののようだけれど、ただでさえ舞台演劇を上演したり劇団を続けていったりすることにはいろんな困難があるのに、このような状況であればなおさらに、演劇を上演できること、芝居を続けられること、劇場で芝居を観られること、のありがたみを感じる。そしてどんな状況であれ、”演じる”ことはある意味ひとの性であり、みんなで協力して何かをすることは楽しい。

 役者さん。

 山本耕史さん、映画を中心に活躍するスター俳優。しかし、めっちゃくちゃ鍛えてるなぁ…。身体が一回り大きくなっちゃってる。

 藤井隆さん、大道芸人。なんだかんだとみんなに使われてる。観客のリクエストに応じて”あのお方”のものまねをしていた、という伏線が愉快に回収されていく場面に大うけ。

 竜星涼くんは女形の俳優。新感線で観た時も女形だったなぁ。

 浅野和之さん、世界中で活躍してきた老パントマイマー。マイムで演じる場面は圧巻。

 相島一之さん、真面目で正攻法な脚本・演出家。言ってることはすごく正しいのに、どこか世間と相いれない哀しさ。役者に演出をつけるときのことばがわかりやすくて的確。

 辻萬長さんは、老舗劇団の大御所俳優。盛りに盛った重厚な芝居は、大げさでありながらちゃんとツボを押さえて魅せる。

 藤井隆さん、大道芸人。観客のリクエストに応じて”あのお方”のものまねをしていた、という伏線が愉快に回収されていく場面に大うけ。

 栗原英雄さん。彼らを担当する看守。実は演劇大好き!な観客代表。

 小澤雄大さん、権力側の偉い人。演劇?何それ?な一般人代表。

 まりゑさん、登場場面は少ないけれど、お芝居のアクセント。

 大泉洋さん、小劇団の売れない役者。必然的に劇団内で雑用係を引き受け、器用に何でもこなす。このグループにおいてもみんなの世話役を引き受け、うまく立ち回っている。でも、いちばん演劇を愛しているのはこの人かもしれない。役者や作家や演出家に一番近いところにいて、どんなお客さんよりも一番近くで、一番最初に作品に触れられる人。お客さんもカンパニーのメンバーも知らない裏事情を全部見て知っていて、カンパニーをうまくいかせるために走り回ってる人。カンパニーに一番必要なのに、いざという時に一番最初にカンパニーから必要とされなくなってしまう人。でも、演じること、創作することしか頭にない人たちを集めて興業を形にできるのは、たぶんこの人だけ。

 誰が欠けても面白い芝居はできない。戦争や独裁政権下やコロナ禍や、そんな様々な社会不安の状況下において、演劇や音楽などの文化は真っ先に”不要不急”のものとされた。ただでさえ経済効率とは相いれなくて、最も打撃を受けやすいものなのに。

 これをどう守るのか?強いものに迎合し、目先の利益にばかり捕らわれているこの国で、とてつもなく時間のかかることだろうけれど、どうにかしていかなくてはいけないと思う。

 

 幕間のインタビューは長かった…休憩25分って書いてあったけど、40分ぐらいあったのではないだろうか。私はそういうのをちゃんと見てしまうタイプなので、トイレにも行けないし、サービスのつもりなのかもしれないけどただの迷惑でしかなかった。ライブ配信でアーカイブもないし、上演中にちょっと止めてトイレに行くこともできないのだから、休憩時間ぐらい劇場にいるお客さんと同じように休憩させてほしかった。

 

 

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