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「プレイタイム」

プレイタイム

 日時:2020年7月12日(日)19:30開演

 会場:有料ライブ配信(アーカイブあり)

 

 新型コロナウイルス感染拡大の影響による休館から約4ヶ月、静かに再開の時を待っていたシアターコクーンが、いよいよ再始動。シアターコクーンと森山未來、黒木華が、岸田國士の戯曲で“新しい観劇体験”に挑戦するという。森山未來くんと黒木華さんが見たくて観ることにした。

 

 公式twitterはフォローしていたけど、いまいちどういうコンセプトなのか理解しておらず、普通の公演を配信するのだろうと思っていた。配信が始まってしばらくは劇場の照明器具や、暗い舞台機構が音もなく映し出されていて、事前に確認したけどパソコン壊れてるの?音出ないの?と不安になる。し.ばらくすると大音量で広告が流れて、パソコンは壊れていないことが確認できた。
 広告の後、開演。ずーっとコクーンの舞台機構が映し出される。劇場内をカメラを持って撮影しているようだ。舞台のどのあたりなのかがよくわからない。キャットウォーク?照明バトン?奈落?地下?やがてシアターコクーンの劇場模型が映し出され、そのそばで未来くんがせりふをしゃべり出す。メイクさんたちが駆け寄って、未來くんの支度をする。階段を上がって舞台上へ。どこからか、せりふをしゃべる黒木さんの声がする。黒木さん うまいなぁ。

 黒木さんが客席から舞台上に上がり、素舞台の上、二人は上下するバトンの間をぬって歩き回りながらせりふを交わす。未來くんはバトンの下をくぐったり、床を転がってみたり、ダンスっぽい動き。
 黒木さんが先に舞台からはけると、スタッフたちが前列の客席をバラしてその座席を舞台上に設置したり、楽器が出てきたり。

 劇場内にはお客さんの姿も見えてくる。客入れが始まったようだ。2つおきに席をあけて座っていく。

 

 未来くんが舞台を降りて楽屋に入ると、別の楽屋から着飾った黒木さんが出てきて、舞台袖へと向かう。マスクをした衣装さんが、キラキラの白いドレスの裾を持ってついていく。そのまま舞台に上がり、前説。その前説には、あらゆる舞台芸術への賛美が述べられていた。ああ、そうか。これは今危機に瀕している舞台芸術を讃える“公演”なんだ。

 

 一方の未來くんも着替えて舞台袖へ。白いレースのシャツ。ゴンドラのようなキャットウォーク?に上がり、命綱をつける。キャットウォークが電動で降りてゆき、芝居がはじまる。ここからが芝居「恋愛恐怖病」の始まりだ!客席のお客さんたちが舞台を見つめているのがわかる。黒木さんもレトロな花柄のワンピースに着替えて、下手からキャットウォークに登場する。

 

 「恋愛恐怖病」は岸田國士作の戯曲。1926年初出の作品らしいが、なんとも…。あまり集中して観ていなかったので、もしかしたら誤解しているかもしれないけれど、私は完全に黒木さん演じる女性みたいなタイプの人間なので、彼女が未來くん演じる男にだんだん距離を取られるのは痛かった。そして二幕で、実はあれは彼女の策略、という負け惜しみとしか聞こえないことを、別の男の口から言わせるというのも痛かった…。


 コクーンの舞台機構を余すことなく全部使い、もちろん搬入口の扉も開けて渋谷の街を見せてくれる。前説の黒木さんの華やかなドレスやウィッグ、小道具に歌舞伎の小道具としてよく使われる波布を使い、生演奏、歌もある。未來くんは北尾さんと一緒にダンスを踊る。オペラも歌舞伎もシュージカルも演劇もダンスも全部盛り、照明も音響もあらゆる舞台スタッフさんも、メイクさんも衣装さんも、役者も演奏者も観客も、みんなが登場人物だ。開演前の劇場の様子から、終演後のアンコール、バラシまですべて映像の中の盛り込まれていて、そうして舞台芸術は成り立っているのだということを感じさせてくれる作品だった。

 コロナで公演が中止になり、劇場で芝居が上演できなくなった時に、リーディングとか過去作品の映像配信とかからはじまって、このような状況の中で何ができるのかと手さぐりでやってきた感じがあった。そうした中で、状況が大きく変わってからたった4か月ほどでここまで新しい表現が生まれるんだと思った。劇場の客席で芝居を見ているときには絶対に見られない景色を見せてもらった。それは確かに生の観劇体験であり、同時に映像表現だった。
 このままだと演劇は死んでしまう、と言われることも開くけれど、死んでゆくものもあれば生まれてくるものもある。今までのやり方ではなく、テクノロジーの力をかりながら新しい表現が生まれるチャンスになればいい。じゃあ観客として何ができるだろう?

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