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「ドレス・コード?展」

「ドレス・コード?展」

 日時:2020年1月12日(日)

 会場:熊本市現代美術館

 

 通町筋のバス停を降りたところで、熊本市現代美術館のショッキングピンクの大きな看板が目に入った。“ドレス・コード?展”。ここは閉館時間も遅いし、どうせ帰りは通町筋からバスに乗るので、帰りに寄ることにする。

 きらら終演後、市役所の14階から街を眺め、歩いて桜の馬場や新町あたりを散策した。洗馬橋の電停あたりは、電車の専用道になるのが好きで、熊本に来たときはよく乗るのだけれど、熊本第一高校(友達が通っていた)は洗馬橋の電停からすぐのところにあることに初めて気づいた。ここで電車を降りて通ってたんだな。いつも電車の窓から見て、是非行ってみたいと思っていた長崎次郎書店にも寄った。小さくてこぎれいな本屋さんだった。2階の喫茶室は貸し切りで入れなかったので、またの機会に。蔚山町まで歩いて市電に乗り、通町筋まで戻る。エスカレーターで3階まで上がり、ロッカーに荷物を預けてロビーに入ると、壁一面に古着が掛かっていた。西尾美也さんの“パブローブ“という関連イベントらしい。みんなが持ち寄った“勝負服”に、年代と思い出を書いたタグをつけて展示するというもの。やって来た人は気に入った服があればその場にある試着室(パッチワークのカーテンで囲まれた円形のスペース)で着替えてそのまま帰っていい(ただし、必ず着て帰らなければならない)。ぶら下がったタグを読むと、それらの服にまつわる物語があっておもしろい。

 さてさてようやくチケットを買って展示室へ。

 

 『ファッションは「着る」だけでなく、「視る/視られる」ものです。』というチラシの一文に、ファッションって哲学なんだなと思う。展示室内は13に分かれていて、それぞれに問いのかたちのテーマがある。“組織のルールを守らなければならない?”というテーマの横には中学校の制服(学ラン)があり、いろんなスーツが並ぶ。制服を着ている、スーツを着ている、ということは組織の一員としてそれらしい、ということをアピールするものだということか。そのスーツにもいろいろな形があり、色や柄がある。中にはそのスーツ、仕事に着て行ける?ってのもある。いや、そういうスーツで個性をアピールしなければいけない仕事の人もいる。仕事や立場が変われば着るものも変わるのだ。

 

 並んでいるのはデザイナーの服やブランドバッグ、靴などが中心。ユニクロの服もある。その他写真や絵画、ビデオ作品など。

 ジーンズが労働着であり、トレンチコートや迷彩柄は戦場で兵士が着るために必要だから生まれたものだったけれど、今はただのファッションとして着られている。そこに何か主張はあるだろうか。シャネルの服が登場した当時は女性の社会進出と結びついていたけれど、今ではそこに当時の思想はあるのだろうか。

 一方で、ロリータファッションや、ヤンキー服(北九州市の成人式の写真も展示されていた!)、パンクや地下アイドルのファッションには、既存の社会に対するアンチテーゼだったり、好きなものは好きだという主張だったり、それを着ることで仲間であることを確認したり、あるカテゴリーに所属していることを強烈にアピールしていたりすることを感じる。着るものを選ぶということは、無意識に人からどう見られたいかを選んでいるのだろうし、着ることである社会の一員であることを確認しているということでもあるのだろう。

 

 ブランドのロゴが意味するものに考えさせられる。品質の保証とステイタスの保証。

 デザイナーさんの「誰がこんなの着るんだよ!ってか、絶対こんなの着て街を歩けないよ!」みたいな服、というかもはや服というより歩くオブジェみたいな服を見ながら、アートだなぁと思った。そういう服は誰かが着て歩くためのものではなくて、デザイナーの自己表現のような気がする。そこにあるのはデザイナー自身の哲学や思想。日常的に、ではなくてスペシャルな時にでも、誰かに選ばれて着られることがないであろう服の持つ意味は何だろう?

 

 展示の最後のほうに、マームとジプシーの≪ひびの、A to Z≫というインスタレーションと、チェルフィッチュの映像作品があった。マームとジプシーは洋服や靴などのデザイナーの人とよくコラボしてるもんね。ファッションと演劇がこんなふうにかかわっていて、それが美術館で展示されるというのが新鮮だった。ありそうでなさそうで、でも意外な感じもあまりない。

 

 アートラウンジからピアノの演奏が聞こえてきたので展示室を出た。19時だった。ここに来た時は絶対に見て帰りたいジェイムズ・タレルの作品まで、館内をうろつく。いちばん奥の井手宜通記念ギャラリーで、スピンオフ企画として「学校のルールは守らなければならない?-高校制服編-」として、熊本県内の高校の制服がいくつか展示されていた。昔から変わらない制服、新しくチェンジされた制服、デザイナーブランドの制服…。あと、特攻服(っていうのかな?)や熊本高校の応援団長の団服もあった。ここまで見られてよかった!

 

 さらに、そのまま向かいの展示室に入る。そこには久留米市の甲斐さんという人が個人で収集している現代美術の作品が展示されていた。個人でこれを買い集めてるってすごい…。個人的には須田悦弘さんの雑草を自力で見つけられたので良かった。

 

 19時半からタレルを独り占めし、美術館を出る。帰りのバスまで1時間くらいあったので、上通りをうろうろする。太平燕を食べたかったんだけど、ものすごく並んでいたのであきらめて飲み屋に入る。もともと酒屋で、奥は角打ちだけどテーブルもある店。酒屋だけあって日本酒が超充実してましたが、時間がなくてビール一杯で退散。熊本、楽しいなぁ。また来たい。

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