「修羅天魔」
劇団☆新感線「修羅天魔~髑髏城の七人 Season極」
日時:2018年5月5日(祝)12:30開演
会場:IHIステージアラウンド東京
天海祐希さんが好きだ。美人で背も高くて歌って踊れて芝居もうまい。なれるものなら天海祐希さんになりたい。いちおう女子なので、芝居を見に行くのも俳優さん(男)目当てになりがちな私が、この人が出ているなら観たい!と思う数少ない女優さん(ちなみにもう一人、宮沢りえさん)。そんな天海さんと古田新太が組んで、ステージアラウンド東京の髑髏イヤーの最後を飾るとなれば、なんとしても観たい!ライブビューイングには行けなかったが、なんとか公演チケットを手に入れた。飛行機も取れた。よっしゃあああああ!
良かった。めちゃめちゃよかった。期待以上だった。
私自身は「髑髏城の七人」というよりは、完全新作だと思って観に行ったので、意外に「髑髏城の七人」だったことにびっくりした。お、いつものこのシーンか。でも、この人とこの人がこんな関係性になるのか!あのセリフがここでこんなふうに言われるのか!あのシーン、きた~~~!っと、ばかりにものすごく楽しめた。なるほど、これはこれでアリだな~と、もろもろ全部がとても新鮮。
天海さん、女スナイパー。極楽太夫/雑賀のお蘭という役名ではあるけれど、キャラとしては極楽太夫×蘭兵衛×捨之介といったところか。男からも女からも愛され頼りにされる存在。まさに天海祐希!
天魔王は最初っから最後まで完全にダークキャラ。思えば、過去の「髑髏城の七人」でも、同情の余地がある天魔王なんて一人もいなかった。どいつもこいつも(って、みんな同じ天魔王だけど)完全な悪人。
そしてまさかの信長公(当然古田さんが二役)が登場。古田さんは、女たらしで人たらしで、本当にずるい男で、そして今までの天魔王の中でも最高にダークな天魔王だった。
天魔王は自分が生き延びる事にかけては貪欲。本能寺の変でもどうにかして逃げ延び、髑髏城でも自分の息子に偽物の鎧を着せ、自分はうまいこと言って息子を身代わりにして逃げ延びる。
最後の最後まで天魔王は信長だったのか、影武者だったのか?かなり翻弄された。さんざん考えた末に、私は天魔王は最初っから最後まで天魔王だったんじゃないかなぁとまで思ってしまったんだけど、どうしても気になって戯曲を買って読んだ結果、最初に出会ってお蘭を口説き落とした脳天気な人たらしはやはり信長で、お蘭が言っていた通り、本能寺の変の時で天魔王に殺されたという結論に落ち着いた。今までの髑髏城の七人でもちゃんとその設定でしたね(^^;)
ダークな天魔王とは対照的に、脳天気な気のいいおじさん=信長が、自分の命を狙うスナイパーであるお蘭を口説き落とす場面は、まさに「リチャード三世」でリチャードがアンを口説き落とす場面みたいだった。うまい…。
キャッチフレーズには”信長に愛された女”とあったけど、信長がお蘭のことを愛していたのかは疑わしい。観終わってからさんざん考えたけど、私は、信長はお蘭のことを凄腕スナイパーとして信頼し、信用していたけれど、女としては愛していなかったと思う。(ちなみに、戯曲にはその件についてちゃんとセリフがありました!)一方、お蘭は天魔王のカリスマ性に完全に魅了されていたと思う。お蘭は”信長を愛した女”だったのだ。
お蘭はそんなに強い女じゃない。雑賀党の凄腕女スナイパーだから、仕事はきっちりやり遂げるけれども、信長にとどめの一撃を刺せないような女だったのだ。誰にでも深い愛を注げる情の厚い女性なのだ。極楽太夫のお披露目だとキラキラの衣装でパレードしても、それが終わればさっさといつもの着物に着替えちゃうようなシャイな女なのだ。だから男からも女からも愛される。一緒に無界の里をまたやろうよ、って言ってもらえる。みんなお蘭が心配で、いっしょにいてあげたいと思ってる。天海祐希さん自身が、きっとそういう人なんだろうね。
竜星亮さん@夢三郎、そう来ますか!度肝を抜かれました。初めて観た役者さんでしたが、美しい!歌うバックでよし子さんとエマさんがコーラスをつけるのも新感線らしくて嬉しい。よし子さんは今回もちゃんと家康に愛されててよかった。
福士誠治さんの兵庫は、暑すぎずクールすぎず、ちょうどいい温度感。夢三郎の男気に惚れていて、だからこその2人の一騎打ちは本気。私的髑髏城いちばんの泣きシーン、関八州荒武者隊最期の場面はやっぱり号泣。兵庫が全力で彼らの死を悲しむからこっちも悲しくなるんだよなぁ。
三五はやっぱりあなたしかいない!河野まさとさん。パンダの着ぐるみもお似合い。
川原さん。花鳥風月には出演されてなかったのですね…。今回の役どころはまさに川原さんの大きな愛を感じました。一緒に行動していて、だんだん強いお蘭のことを好きになっていって、彼女を全力で守ろうと思うようになったのだと思う。ちょっぴり弱い用心棒なのがご愛嬌。
山本亨さん@狸穴二郎衛門と梶原善さん@ぜん三を並べて観られるなんて贅沢。ぜん三さんと兵庫の3D殺陣はすごくかっこよくて面白くて好きでした。
戦う相手の吉田メタルさんは終始きらりんキャラで押してましたが、いやいやそんなはずはないと思っていたらやっぱり、鍛えまくった筋肉を無駄に披露した後、ズラを飛ばされてやられていく姿に安心しました。
原慎一郎さん、歌うまい!踊れる!誰?鉄騎兵そろってのミュージカルシーンはかっこよくて爆笑!あ~楽しかった!
三宅弘城さん@カンテツのうつけっぷり、最高!逆木さん@贋鉄斎の出番があれだけなのも潔い。三宅さん、アオドクロでもカンテツだったんですね…全然覚えてないんですけど(すみません)。三宅さんはすごく動けるので殺陣がめちゃめちゃかっこいい!
クライマックス。
お蘭が立ちすくむ後ろで360°舞台がぐるぐる回る。あれ?まだカーテンコールじゃないよね?ああそうか、これはお蘭の思い出がまんま”走馬燈”としてめぐってるシーンなんだね。風に吹かれるお蘭は、「蒼の乱」の蒼真みたいでしたよ(^^)
1997年に大野城まどかぴあで観た「髑髏城の七人」がなければ、私はこんなに新感線を追っかけていないと思う。その後、アカドクロ、アオドクロ、ワカドクロ、鳥髑髏、下弦の月髑髏(花髑髏はライブビューイングしか見られなかったし、風と上弦の月は残念ながら見られなかったんだけど)と「髑髏城の七人」を見てきて、今回の極髑髏は、キャストもストーリーも、なんかもう長年観てきたご褒美みたいな公演だった。
だから、天海さんが捨之介のラストの決め台詞を言うのも、髑髏城と言えば7人のシルエットだろう!というあのシーンがちゃんとあったのも、もう待ってましたぁ~~~でした。
ふるちんと天海姐さんは、秋にNODA・MAPの「贋作・桜の森の満開の下」でも共演。楽しみだー!しかも北九州で観られる!あー、めちゃめちゃ楽しみだ!
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