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「浮足町アンダーグラウンド」

大野城まどかぴあ開館20周年記念事業
まどかぴあ舞台創造プログラム プロデュース公演
「浮足町アンダーグラウンド」
 日時:2016年9月11日(日)14:00開演
 会場:大野城まどかぴあ

「まどかぴあ舞台創造プログラム」プロデュース公演とは・・・
 1996年の開館当初から地域の演劇文化の普及・育成事業を行ってきた大野城まどかぴあが、開館20周年を機に地方における質の高い芸術文化生産の可能性の探求にさらなる力を注ぐため、新たに挑戦・発信を行うことを目的に実施する事業です。
 その第一弾となる今回のプロデュース公演では「劇団☆新感線」の座付き作家であり、今やテレビ、映画等の脚本家としても活躍する福岡県出身の劇作家・中島かずきが本公演のために新作を書き下ろします。演出は、読売演劇大賞・優秀演出家賞受賞など、数々の実績を持ち、大阪を拠点に小劇場界屈指の劇団として長年活躍する「南河内万歳一座」座長の内藤裕敬。そして出演に、地元・大野城市出身で、現代の日本演劇界を牽引する俳優の一人である池田成志を迎えます。この豪華な布陣に、九州・沖縄地域からオーディションで選ばれた14名の俳優たちが加わり、約1か月間の稽古を経て」、一つの作品を作ります。(チラシより)
 

 というわけで、作:中島かずき、演出:内藤裕敬だったはずの作品ですが、公演の2週間ほど前に「稽古の過程の中で、中島かずき氏の執筆した脚本を素材に内藤裕敬氏が新たに書き下ろした台本で上演する運びとなりました」という発表が!
 全文はこちら
 なんだこれは!こんなことがあっていいのか!?

 ぎりぎりまで仕事がどうなるかわからなかったのでチケットは買っていなかったのだけれど、観たいという気持ちには変わりなく、仕事の見通しがついたところで予約。無事に観劇できた。

 ものがたり
 浮足町は長年、石炭を掘り出すことで栄えてきた。だが、この町には地の底に隠した大きな秘密があった。それは人造採掘人間ホランド―。
 三津繩総研所長(山下晶)は、街の秘密を探るべく、社員の早見(酒瀬川真世)と子会社社員の黒木(椎木樹人)を浮足町に送り込む。

 浮足町。浮足鉱山の社長(中村大介)や社員(阿部周平・小湊倫子)、やくざの子分(池田成志・岩本将治)が集う街の食堂に、食事をしに訪れる早見と黒木。そこへ役場の職員(元一)が地域活性コンサルタント(横山祐香里)を連れてやってくる。町おこしの相談をするうちに”ホランド”の話題になるが、住民は必死に”ホランド”のことを隠したがる。

 芝居はおもしろかったし、役者も頑張っていた。声の出し方からして今までと違っていた。
 当日パンフレットの内藤さんと成志さんの対談を読むと、この企画は、芝居を作ってるうちに”地方で作った芝居を発信する”以前に、”地方で、お客さんからお金を取って見せるに値する芝居をちゃんと作る”ために、”まず地元の役者をちゃんと育てる”ことに目的がシフトしちゃったんじゃないかと思えた。成志さんも内藤さんも、役者たちを相当厳しく鍛えまくったようだった。これが、ど素人の市民を集めて作る芝居で、さらに役者の中に成志さんがいなかったらそうはならなかったかもしれない。成志さん自身、演出もするし、プロの役者として故郷の役者たちに対して、これじゃいかん!と思ったのだろう。これは池田成志さんの地元愛から出来上がった芝居なのかもしれない。

 中盤、住民たちの大ボラ話が次々に繰り出され、ものがたりが破たんし始める。
 これって、エチュードで作ったんじゃないかなー?稽古の過程で、脚本を基に役者同士でエチュードをやるところから始めて、それを内藤さんが拾って脚本に起こし、芝居を作っていったのではないだろうか。結果、”原作:中島かずき、作・演出:内藤裕敬”になったのかなー、という勝手な憶測。

 いくつかの場面、いくつかのセリフにちょっとうるっとした。
 食堂に集うのは、市長ややくざや炭鉱社長の2代目たち。それは、”次の世代”を感じさせる。炭鉱の地下に埋められる”都合の悪いもの”の話は、エネルギー問題を思わせる。前の世代と新しい世代をつなぐ食堂のおかみ。そこには中島かずきさんの故郷への思いを感じた。炭鉱の町・田川出身の中島さん。浮足町の様子は田川に重なる。

 しかし、なんで”浮足町”なのかな。途中何度も”浮足”が”うきは市”に聞こえた。浮羽に炭鉱があったわけではなさそうだから、たぶん関係ないと思うけど。パンフレットの役者インタビューで、「浮足立つのはどんな時?」ってあったから、元は住民が町おこしで浮き足立っちゃう話だったのかな。

 この後カンパニーは八代・宮崎で公演の予定。地方の衰退しつつある町に何かを落とせればいいのだけれど。

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コメント

ごぶさたしております。観世です。
エチュードの貼り合わせ、私も感じました。
結論から言えば、企画段階当初に胸躍らせた期待は裏切られたのですけれど
今はその原因を探りたい気持ちになっています。
もちろん一つはかずきさんの台本でなくなってしまったこと。
それからSUNCHILDさんの言われるように「まず地元の役者を鍛えることに目的がシフトしてしまった」のも大きな要因であると、ブログを読ませていただいて感じました。

私も感想を書いているのですがまだ公演を残す中で上げると、動員を減らしかねないと思って(笑)
公演が終わってからアップしようと思ってます。

投稿: 観世 | 2016/09/13 11:45

>観世さん
ご無沙汰しています!コメントありがとうございます。

私としては、まあこの作品は、これはこれで良かったんじゃないかと思っています。いろんな偶然が重なった結果このような形になったのだろうと思われます。中島さんの脚本で芝居ができなかったことは非常に残念だし、何よりもご本人に対してもとても失礼なことだと思いますが、中島さんはいろんな事情を理解して今回の件を了承されたのであろうと推察します。

また、今回の件は地方において演劇がどうあるべきかという問題も孕んでいるように思います。立派な劇場をどう活用するのか、東京から演目を呼んできて公演するだけの場なのか、住民のだれもが舞台に立てる場にするのか、住民の中からプロフェッショナルを育てて、そのプロが全国を公演して回る仕組みを作るのか。まどかぴあはそもそも”公共ホール”であって”劇場”ではないし、ちゃんとしたプロデューサーもいないと思います。20年間、公共ホールとしてすごく頑張ってきたことはよく知っていますが、厳しいことを言えば、まどかぴあには今回このような公演をプロデュースする力がなかったのだろうと私には思われます。

思うところはいろいろあるのですが、このへんで。
またどこかでゆっくりお話ししたいですね。
観世さんの感想も楽しみにしています(^^)

投稿: SUN CHILD | 2016/09/13 23:17

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