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「死刑執行中脱獄進行中」

「死刑執行中脱獄進行中」
 日時:2015年11月28日(土)13:00開演
 会場:銀河劇場

 未來くんが、冨士山アネットの長谷川寧さんといっしょにやるらしい。観たい!それは観たい!てか、未來くんの仕事なら何でも見届けたい!
 というわけで、まぁ帰省ついでという言い訳でチケットゲット。天王洲銀河劇場の7列目端っこ。わーい、近い!

 私の席からは見えなかったけど、下手にバンドがいて、生演奏。
 

 冒頭登場した未來くんは、すごく悪い人の顔をしていた。

 荒木飛呂彦の漫画が原作だという。
 女を殺して監獄に入れられた男が、その部屋で経験した不思議な恐怖。
 そして、大海原に浮かぶ遭難した船上でのものがたり。
  
 せりふ、というか独白が冒頭に少しあったくらいで、あとはほぼ台詞なし。しゃべるのは未來くんと初音映莉子さんだけで、ほかの出演者はダンサーやパントマイムをやる人など、基本役者じゃない人たち。
 ほぼ身体の動きだけで、物語というか、こういうことを表現しているのかなーみたいなことはだいぶ伝わってきたように思う。長谷川寧さんは「ダンスではなく演劇をやっている」らしい。いったいダンスと演劇の違いってなんなのだろう?未來くんは、そのダンスと演劇の境目を軽々と超える。「演劇をやっている」とか、「ダンスをやっている」とかじゃなく「森山未來がそこにいる」。ジャンルなんて関係ない。

 ラスト近くのダンス。男が生まれて、歩いて、転んで、もがいて、生きて、そんなダンス。未來くんは、ほかのダンサーたちに支えられたり、邪魔されたりしながら動く。未來くんの顔が、いい顔になった。楽しそうとか、嬉しそうとか、ほっとしたとかじゃないけど、とにかくいい顔で踊っていた。
 やがて、ほかのダンサーたちが一人、またひとり未來くんから離れ、去っていく。それを見ている女。
 一人になって、自由に踊る未來くんのもとを、女は静かに去っていく。

 女を見送り、未來くんは舞台上に一人取り残される。膝を抱えて、ぽつんとひとり。
 そしてまた、踊り始める。息を弾ませて、たった一人で。暗闇の中で。

 原作漫画は会場で売っていたので、購入して、終演後に読んだ。
 まったくもって私好みではない、なかなかグロい漫画だった。あの漫画が、こんなにもスタイリッシュで美しい舞台になるのか!

 私は森山未來くんがとても好きだ。
 役者として、自分だったら絶対こんなこと言わないなっていうせりふをしゃべったり、自分にはまったく理解できないような人を演じることを、”仕事だから”とやってのける人を、私はとても尊敬するし、プロだなーと思う。
 けれども、森山未來というひとは、それを拒否したのだと思う。
 これは私の勝手な思い込みだけれど、森山未來は決して、役者としてそれができない人ではないと思うし、むしろその役になるためにとてもとても努力していた人だと思う。でも、自分に理解できなかったり、納得できないことはできないし、やりたくないと思う人なのではないかとも思う。
 それよりも、自分の中にある”表現したい”という欲望に忠実に生きたいと思ったのではないかと思う。
 
 最近の未來くんの活動を見ると、自分の表現欲に忠実に、ダンスを作って踊っているように思う。そして、そのダンスは、彼の心の叫びであり、自分をわかってほしいとか、誰かと関わりたいとか、誰かとわかりあいたいとか、強烈に他者を求める思いを感じる。そのくせ、言ったりやったりしてることは、何だか他者を寄せつけない。
 私はこんなさびしんぼうに強烈に惹かれてしまう。
 だからまた、未來くんの表現を見に行くと思います。それがダンスであろうと演劇であろうと映画であろうと。

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