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「従軍中のウィトゲンシュタインが(略)」

テアトル・ド・アナール「従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ攻勢の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上でたどり着いた最後の一行”---およそ語り得るものについては明晰に語られうる/しかし語りえぬことについて人は沈黙せねばならない”という言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか?という語り得ずただ示されるのみの事実にまつわる物語」
 日時:2015年10月18日(日)14:00開演
 会場:こまばアゴラ劇場

 虚構の劇団の小沢道成さんが出演、共演は、以前虚構の劇団にも出演していた古河耕史さん(福岡県出身)。しかも作・演出はDULL‐COLORED POPの谷賢一さん。ちなみに私の中では、蜷川幸雄と野田秀樹のあとは、長塚圭史と谷賢一だと思っている。観たい!小沢さん出演の作品は、福岡じゃなかなか見られないし。・・・というわけで、そもそも今回の上京の目的は、あなピグモ捕獲団の追っかけだったはずが、あなぴを裏切ってしまいました。ごめんなさい。

 初アゴラ。
 ですが、数年前に日本民芸館を訪れたときに下見していたので今回は迷わずに到着。

 哲学者・ウィトゲンシュタインという名前は聞いたことはあった。何をした人かは知らないけど。
 高校生の頃、”哲学”ってなんだかよくわからないままに、ちょっとかっこよさそうな気がして、哲学科に進学することを考えてみたこともあった。でも、延々と頭の中で物事を考えるなんてことをやってたら、私は引きこもりになって自殺とかしちゃいそうだなーと思ってあっさりやめた。そんなわけで、なんとなく深入りを避けている哲学まわり。

 第一次世界大戦中、オーストリア軍に従軍していたウィトゲンシュタインが所属していた小隊。隊員は5名。ウィトゲンシュタイン(古河耕史)、隊長のヘルマン・スタイナー(榊原毅)、片足を失くしているカミル・フリードリヒ・ガリウス(大原研二)、弱虫で小柄な絵描きベルナルド・クント(小沢道成)、そして粗野で下品なミヒャエル・グルーム(本折智史)。彼らと戦場で過ごす日々の中で、ウィトゲンシュタインは彼の哲学を深めてゆく。 

 私は頭でっかちなので、こういう芝居がとても好きだ。ウィトゲンシュタインの思想とか、よくわからなかったけど、あの長い暗転のシーンで、”---およそ語り得るものについては明晰に語られうる/しかし語りえぬことについて人は沈黙せねばならない”という言葉の意味が、すっと頭に入ってきた気がした。
 役者さんたちは皆達者。
 小沢さんが普通の男性!(笑)きっと隊に一人はいたであろうよわっちい兵士。
 古河さんはあまり感情の起伏のない哲学者がよく似合う。
 スキンヘッドにヒゲの隊長=榊原さんは、大柄ですごい声量!
 ミヒャエルとウィトゲンシュタインのイギリス留学時代の友人=デイヴィッド・ピンセントの幻を、本折さんが二役で演じる。・・・すごい・・・。激しいミヒャエルと物静かなデイヴィッドが一瞬で切り替わる。

 コピー紙(更紙や色紙も含む)をホチキス止めしただけ、だけどかなりの厚さに2分冊になったパンフレット600円。役者紹介とか、ウィトゲンシュタインの年表とか、彼の思想についてとか、用語の解説とか、登場人物のサイドストーリーとか盛りだくさん。嬉しい。まだちゃんと読み切れてないので、ウィトゲンシュタインの入門本とともに、のんびり読んでだらだら楽しもうと思います。

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