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「ぬれぎぬ」

アマヤドリ「ぬれぎぬ」
 日時:2015年5月30日(土)19:30開演
 会場:西鉄ホール

 アマヤドリさんが3年ぶりに福岡に上陸。
 私にとっては2012年3月に東京で観たぶり。

 今回はアマヤドリ三部作「悪と自由」のシリーズvol.1として、東京で1ヶ月のロングラン公演を経た作品の再演。
 すごく面白かった!

 

 

 ものがたり
 向井(松下仁)と有島(笠井里美)は同棲カップル。彼らが暮らすこの町は、犯罪者の更生を民間企業に委託していたり、”結婚”という制度もない”特区”である。向井も有島も「ニンゲン」という名の派遣会社から、犯罪者を反省させることを目的としている民間の組織”共生リンク”に派遣されている派遣社員で、早朝から深夜まで日々忙しく働いており、すれ違いの生活。
 有島が”担任”しているのは、門田(糸山和則)という26歳の男。付き合っていた女性を殺したストーカー殺人の罪で服役?している。自分のやったことをあっさりと認めて、でも反省はしないから死刑は当然だと言う。そんな彼に、有島は改心を迫り、被害者の家族・佐野(小角まや)はいらいらした様子を見せる。
 

 穏やかな笑顔で、はいはいと罪を認め、僕なんか生きてる価値なんてない、死刑でいいんですと言う門田に、なぜだかものすごく共感してしまった。一方で自分の価値観を”正しいもの”としてそれじゃだめなんだよ、それっておかしいよねと、門田に改心を迫る有島は、見ていてとても気持ち悪かった。普段自分はそんなことばっかりしてるくせに。

 向井が親会社”共生”から出向中の新人社員・村田(榊菜津美)と一緒に担任している占部(中村早香)は、医療従事者として患者に筋弛緩剤を投与し、安楽死させたとして死刑判決を受けている。向井のアイディアで、村田は口がきけないということにして、占部と筆談しながら心を通わせ始める。
 ”共生リンク”の支店長である遠藤(沼田星麻)は妻子のある身でありながら、有島と関係を持っていた。とはいえここは”特区”なので、”不倫”なんてものもない、ことになっている。しかも有島は妊娠していた。父親は向井か遠藤かわからないという。

 ルールって、多数の人が暮らしやすくなるために、あるいは権力者が自分の都合よく社会を統制するために作っているもので、そのルールに従わないことに対して罰があるのだと思う。門田も占部も彼らなりの信念に従って”罪”を犯した。けれども、その信念は彼らにとっては真であって、おそらくはそれを曲げるつもりは毛頭ない。彼らは世の中に今あるルールに従わなかったから罰せられるのであって、彼らの信念が正しくないから罰せられるのではないと思う。何をどう信じようと、それは彼らの自由だ。たとえば江戸時代に、キリスト教を信じていた人たちのように。

 ある日、有島のもとに佐野から小包が届く。真実を追い求める佐野の粘り強い行動から、門田の真実が明らかになっていく。

 佐野も、門田も、そして占部も、なんだか素敵だなと思えた。
 それに対して、犯罪者ではない有島や遠藤がなんともだめーな人に見えてくる。こっちの方が世間的には”正しい人”として暮らしているはずなのに。

 ”ルール”なんて一応の基準で、社会や時代において変わるものだ。
 人の心を変えるものは、ルールや罰ではなく、人と人とのかかわりだったり、人が人を思う気持ちだったりでしかないのかもしれないと思う。
 電話に出られない向井が恐れているもの、それは愛する人の気持ちが変わっていくことであり、愛する人が離れていくこと。どんな凶悪犯罪より、死よりそれは恐ろしいものなのかもしれない。

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