「エンドレスサラヴァー’13」
あなピグモ捕獲団「エンドレスサラヴァー’13」
日時:2013年10月19日(土)19:00開演
会場:湾岸劇場博多扇貝
2010年に下北沢のOFF・OFFシアターで上演された作品の改訂再演。
初演は、あなぴ初のOFF・OFF公演で、書けない作家のお話はなんだかちょっと生々しく、ともすると痛々しく、それを見せたくないとでもいうのか疾走というよりはなんだかちょっと飛ばしすぎて混乱した感じもした。
今回はあの時を冷静に、客観的に観て、すっきりと、ちょっぴりわかりやすく。
初演の感想はこちら
白木の柱が円形に並ぶセット。中央に文机。床に散らばる、原稿とかノートみたいな紙類。
大筋は初演と変わらず。書けない作家のお話。
あまあまあま~い手土産を持って作家宅を訪れる編集者(古賀今日子)。
ふつうの、よくある顔だからなかなか顔を覚えてもらえない妻が、入れ替わり立ち代わり登場。
家には書生の純一郎(大竹謙作)。しかし、作家はその書生に見覚えはなく、妻も知らないという。
一方、(初演では大学のサークルだったけれど)大倉のノートを探すために、取り壊しの迫った大学に忍び込む、ネットを通じて集まった人たち。
中庭でノートに向かい、一心に何かを書きつける純一郎。それは若かりし日の作家の姿?
入り混じる時間と場所。
明日の12時だと思っていた締め切りは、実は一週間後で、さらに編集者からの電話で、1年延びたと知らされる。電話?固定電話の線は断ち切られ、携帯電話の充電は切れているというのに。
これは作家の脳内なのかな?入り混じる記憶と現実、それとも夢か?
作家=長岡暢陵さん。いい感じに中年作家。哀しみや苦悩がにじみ出る感じ。
長岡さんは、どの舞台に出てもやっぱり長岡さん。
宇野さん(立石義江)は、大倉の作品を世に出した編集者・島田と同じく、大倉を昔から知る友人か。いつまでたっても、どうしても”さん”づけされてしまう。本当は、あなたには名前で呼んでほしいのに。しょうがないから自分で自分を”さん”づけしてみる。
長岡さんと立石さんの交わす会話が切なすぎる。
私たちは随分と年齢を重ねてしまった。もうあの頃には戻れない。
なんだかとてもとても切なくて、ちょっぴり泣けてしまいました。
編集者・宮崎=コガキョさん。”きれいなハイヒール”を”褒める”妻に逆上する様がかっこいい。昭和のモダンガールみたいな髪型が素敵。衣装は胸元の開いたドレス。今まであんまりこういう服を着ているコガキョさんを見たことがない。セクシーな胸元を見せたほうがいいんじゃない?という衣装さんのアドバイスか?私も観ててドキドキしちゃった。とても魅力的でした。
ほかの方々の衣装もみんな素敵。石井さんのシフォンの袖とか、伊藤さんの襟元のリボンとか。長岡さんの着物も手作りだよねー。でも、みんな黒くて、ちょっと喪服みたいな感じもした。何を葬っていたのだろう。
装置にいろいろ仕掛けが。
おなじみ、透けるスクリーンとか、降ってくる幕とか、降ってくる紙とか。
クライマックス。書生・純一郎の首を絞める作家。が、消えた!なんだあれは!ネズミ捕り?どうなってたんだ?
さらにラスト、門が閉まろうとした。おお、そこが動くか!門をくぐろうとする作家。門を閉めまいと頑張る純一郎。
作家は、門をくぐったのか?
長岡さんや立石さん、コガキョさんは長く別の劇団に出演されているのを観ているので、彼らがあなぴに出ているのを観るのはなんだか不思議。むしろもう、あなぴじゃないみたい。音楽も、なんだかちょっと、あなぴじゃないみたい。それが初演と印象が変わったと思った理由かな。
10月19日は、作・演出の福永さんの40歳の誕生日。
不惑ということで、もう惑わないんだそうだ。
私は不惑を越えても惑ってばっかりだけど、初めて観たときにあなピグモ捕獲団をずっとずっと見つめ続けると決めた、それは今も変わらない。今でもあなぴに会いに行くときはすごくどきどきする。こんな時間を持てるって、幸せなことだなと思う。そしてこれからもまだまだ、こんなどきどきする時間を持てますように。その生命が尽きるまで。
”サラバ”と言うにはまだ早いですよね。
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