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「Final Fantasy for Ⅺ.Ⅲ.MMⅪ」

福島県立いわき総合高等学校 演劇部 福岡公演~東日本大震災復興支援~
「Final Fantasy for Ⅺ.Ⅲ.MMⅪ」(ファイナルファンタジー・フォー・サンテンイチイチ)
 日時:2012年3月3日(土)18:30開演
 会場:明治安田生命ホール

 福島県立いわき総合高等学校は、平成16年に旧福島県立内郷高校が学科転換したことによって誕生した総合学科の高校。
 特に、芸術・表現系列では、音楽・美術・演劇の各分野にわかれて科目が設定されており、それぞれの芸術分野について専門的に学ぶことができる。2年次では最高で10単位、3年次では12単位の、舞台芸術関連の科目を選択して学ぶことができるそうだ。
 演劇総合演習の授業では、外部講師を招き(過去の講師は、五反田団の前田司郎、東京デスロックの多田淳之介、マームとジプシーの藤田貴大など)、その集大成としてのアトリエ公演を行っているほか、五反田団や東京デスロックと合同で東京公演も行っている。

 ちなみに、箱根駅伝往路五区の山登り区間で4年連続区間賞を取った柏原竜二くんは、この学校の出身だそうだ。

 そんな演劇最先端の高校の演劇部。プロ顔負けのものすごい芝居だったらどうしようと思ったけれど、そんなことはなかった。
 舞台上にいるのは、どこにでもいる、私もよく知っている、普通の高校生だった。
 
 ストレートパーマをかけた前髪をピンでとめてる男子生徒。シャツのボタンは3つくらい開いていて、だらしなくシャツを出している。
 お化粧に余念がなく、厚く盛った女子高生たち。
 彼らはプロレスで汗を流し、ロールプレイングゲームやカードゲームに興じ、KARAやPerfumeのコピーをして踊りまくり、柔軟な感性で世の中に怒りをぶつけ、笑い飛ばす。

 2011年3月11日の東日本大震災と、それに伴う福島第一原子力発電所の事故が彼らに与えたものはとても大きかったと思う。アフタートークで、彼らはしきりに「事情はそれぞれ違っていた」と繰り返していた。
 自宅が警戒区域にある生徒、福島から去って行った生徒…たぶん家族を亡くした生徒もいただろうし、家族が原発で働いているという生徒もいるだろう。そんな中で彼らは自分の経験したことへの不満や、悲劇を、簡単に言葉にして発することはできないと感じたのではないだろうか。不用意な発言は、誰かを傷つけるかもしれない。”それぞれ違う事情”を、彼らは深く重く受け止め、その上で彼らなりに精いっぱいの表現をしたのがこの作品なのだろうな、と思った。

 いろいろと複雑な事情と思いが渦巻く中で、それでも彼らは久しぶりに会う友人たちとの再会を喜び、社会の出来事に怒り、そんな中で身体を動かして表現をした。
 彼らに“演劇”という表現手段があって本当によかった、と思う。
 
 言語で思いを表現するのは非常に高度で、高い知能を要求される。
 十分にコトバで思いを伝えられない小学生や中学生の思いを、どうやって吐き出させてやれるのか。
 芸術の可能性はここにもあるように思う。

 震災で被害を受けた地域や、そこに暮らす人々のために、福岡でのんびりと暮す私に一体何ができるのか。
 答えはまだ見つからないし、わからないままでいる。
 けれども、とりあえずは彼らの精一杯の表現を、ここでこうして受け止めることができてよかった。

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