« 「Endless SHOCK」 | トップページ | 「異郷の涙」 »

「お伽草子/戯曲」

劇団うりんこ「お伽草子/戯曲」
 日時:2012年2月4日(土)19:00開演
 会場:ぽんプラザホール

 劇団うりんこの名前は以前から知っていたけれど、観るのは初めて。児童劇団である、というよりも、あの!?という作家・演出家の作品を時々上演するので気になっていた。
 今回は、太宰治の「お伽草子」を、宮崎の劇作家・永山智行(こふく劇場)が脚本、京都の三浦基(地点)演出で。うわ~気になる!

 劇場に入ると、一人のおじいさんが座っていて、昔を語っている。おじいさんは名古屋の出身(劇団うりんこは名古屋に拠点を置く劇団)らしく、一昔前の中日ドラゴンズの思い出を語ったりしている。

 観に行く前に手持ちの電子辞書に保存していた原作「お伽草子」を読んだ。浦島さんが海に潜ったところまでしか読めなかった。
 
 開演。
 あれ?なんだか読んだのとは違う…が、すぐに読んだのが出てくる。
 
 どうやらこれは「お伽草子」に限らず、太宰治の作品をコラージュしたものらしい、と思う。
 
 太宰を初めて読んだのは、二十歳を過ぎてからだった。10代の頃は日本文学にそんなに興味がなく、太宰治も文学史で勉強する歴史上の人物だと思っていた。彼が昭和の人間で、そんなに大昔の人ではないと知ったのはわりと後のことだった。
 初めて読んだのは「斜陽」だったと思う。当時、日本の名作文学を1時間のテレビドラマにする番組が放映されていて、それを観て面白かったので読んだのだ記憶している。おもしろかった。何がおもしろかったのかははっきり記憶していないけれど、とにかくそれまで読んだことがなかったけど、やはり名作と言われていたり、文学史の教科書に載る人の作品は面白いんだなと思った覚えがある。
 
 そんなわけで、20代から30代にかけて、暇なときに太宰・漱石・芥川などのいわゆる”文豪”の作品を続けて読んでいた時期があった。理由は、たぶんはずれが少ないだろうと思ったからだ。どれもおもしろかったけれど、特に太宰については、30歳を過ぎてから、そのダメ男っぷりにかなりはまった。自意識過剰だったり、酒や薬物におぼれたり、いろんな女を遍歴したり・・・。ああ、私はダメ男が大好きなのである。

 「お伽草子」を読みながら、ああ、太宰だわ~と思った。こぶとりじいさんとか浦島さんのなかに、まさに太宰がいた。芝居を観たら、舞台のど真ん中に太宰がいた。なんだ、これは”主人公・太宰治”の芝居なのだった。
 脚本の永山さんは太宰が好きなのだろうな~思った。

 演出がまたおもしろい。地点の芝居は、興味がありながら都合がつかず、残念ながら見たことがないのだけれど、セリフを言いながらそれとはまったく違うニュアンスの芝居をさせるのがおもしろかった。小説にある、いわゆるお伽草子を読みながら、夫婦喧嘩をしていたりとか。食器をひっくり返すシーンは圧巻。戯曲上(原作小説上)5歳の女の子が、チョコレートをべろべろなめているさまは、とても5歳とは思えない舌使い!で、さらにその後、同じ女優さんが演じる「かちかち山」の兎が、戯曲の指定上(原作小説も)“16歳の処女”だとは思えない、なんというかコケティッシュでエロティックだった。おとなの芝居だぁ…!それらの演出は、原作者である太宰治のダメダメっぷりを浮かび上がらせていて、私としてはかなりツボだった。

客入れの時から舞台に座っていたおじいさんは、ず~っと舞台上にいて、その手元に一本の棒とつながった綱があったのがずーっと気になっていたのだけれど、クライマックスでその綱が引っ張られて、背景にあった竹組みの壁が倒れてきた!と見せかけて止まった。???最終的にそれは、雀を捕らえる竹籠だったらしい。最後の最後に、舞台真ん中でお伽草子を語っていた太宰の上に覆いかぶさった。
 太宰を捕まえた、かな?

 終演後は、ままごとの柴幸男さんと役者2名のトークあり。
 三浦さんの演出の話など。
 柴さんって、もっと背がちっちゃくてぽっちゃりした体形の人だと思っていた(ザ・たっちの人みたいなイメージ)のだけれど、実際はすらっとした長身の人だったのでびっくりした。あと、すごく感覚でしゃべる人だったのにもびっくりしました。

|

« 「Endless SHOCK」 | トップページ | 「異郷の涙」 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「お伽草子/戯曲」:

« 「Endless SHOCK」 | トップページ | 「異郷の涙」 »