「アンダーグラウンド ファンク」
あなピグモ捕獲団「アンダーグラウンド ファンク」
日時:2011年11月12日(土)19:30開演
会場:参宮橋トランスミッション
1年ぶりのあなピグモ捕獲団公演!会場のある参宮橋は、大学時代に時々通っていた町。超ひさしぶり!
「アンダーグラウンド ファンク」ってタイトル、すごくいい。好き。
"underground funk"って、これだけでいろいろと深読みできすぎる。
10年以上あなぴを見ているけれど、こんなことがしたかったんだなぁということをいまさらながらに思う。
初心に帰るような、だけど確実に進化している、いい公演でした。
ものがたり
どこかの町。むしろ村に近い、村から格上げされた小さな町。
足を引きずりながら、赤く怪しげに咲く花を手にする巡(為平康規)。
墓守(長野慎也)は、遺体を運ぶついでに買い占めた缶詰や食料などを運んでいる。
町の有力者が次々と行方不明になる中で、担ぎ出された町長(貝谷聡)はなんだか頼りなさげ。
花屋の芳恵(杉本美豊)は、白い菊しか仕入れられないこの街で、もっと華やかな花を手に入るようにしてほしいと、町長の愛人になることを宣言。
場末の飲み屋“キャッツアイ”には、姉妹ではない3人の女(石井亜矢・遠藤咲子・ますだようこ)。今はもうここにいない主人に店を託されてしまったようだ。
ピエール山本(小澤貴)はサーカス団の団長になると言い、記憶をなくした若者(有賀太朗)と一緒にサーカスを立ち上げようとしている。
一度はこの街を出て、芸能活動なんかを始めて見たものの、結局戻ってきた女・奈江(若林史子)。
言葉の通じない猫(青木五百厘)。
都会からやってきた元新聞記者の男=鈍谷(浮谷泰史)は、奈江やこの街を取材している。
なぜ彼らは、この街にとどまり続けるのか?
かつてこの街のがれきの山のてっぺんで、宇宙と交信しようと試みた子どもたちは、やがておとなになり、街を離れたり戻ったり、或いは一度も街を出ることなくずっとこの街に暮らしている。
「どうしてここを離れないのですか」という質問は「何のために生きているのですか」という問いに等しい。
何度も、何度も繰り返し問われる問い。
一つ一つの場面が丁寧に作られている印象。
絵本のページをめくるように、切り替わる場面。
狭い舞台上に、合計13人もの役者が入れ替わり立ち替わり登場。13人もいたけど、狭苦しい感じもなく(段差のある舞台のせいかもしれません)、すっきりまとまった感じ。それぞれのキャラクターに見せ場があって、なかなかバランスよく仕上がってました。
蝦蟇=有賀太朗くんがいいですね。初・あなぴで、わけのわからない空間に置かれて戸惑うこともあっただろうに、とても素直に受け入れている感じがしました。
対する小澤貴さんが、いい感じにおっさんでオトナな感じ。
石井さん・遠藤さん・ますださんが、三姉妹=キャッツアイってのも、なんだか昔のあなぴっぽくて懐かしい感じ。
青木五百厘さんのネコも、とてもネコらしくかわいらしい。きりりとした立ち姿と、ラスト近くの優しいまなざしがとてもいい。
なぜここを離れずにいるのか。
なんのために生きているのか。
理由なんてたぶんない。他に行き場がないから、ここにいる。
ただ、生きることを許されているから、死ぬことを許されていないから、生きている。
と、ひとことでぶった切ってしまいながら。
世界とつながりたくて、うまくつながれなくてもたもたしながら、でも平気なふりをして、そんなみっともなくもがいている自分を見て見ぬふりして目の前の世界から目をそらしているのは自分自身だということに気づかされる。
遠く離れた地で起こった出来事をよそごとにして、けれどもどんなふうにつながればいいのか分からずに立ちすくんでいる。
どうすればヒトゴトじゃなくなる?
そうだった、ずっとそのことを考えてたのだ。
そうか。
サーカス団がくばる汚染された水をもらおう。
そうすることで世界とつながれるかな?
1年ぶりの東京で会った人たちに、あの日の話を聞くにつれ、あの時どれほどの恐怖と不安を感じたのかを、いまさらながらに知る。その日私は、遠く離れた福岡で、なぜか中国語の音声が流れるテレビで、津波がゆっくりと陸を進んでいく様子を観ていた。福岡西方沖地震の日にも福岡を離れていて直接地震を経験していない私にとって、セカイはどこまでも遠くヒトゴトで、ただひたすら自分と自分の目の前のことばかりに必死にしがみついて暮らしている。
演劇で、こんなふうに世界とつながる。
演劇でしか世界とつながれない。
私は私の仕事でちゃんと世界とつながることができているか?
最後に参宮橋を訪れた日は、今の仕事で生きていくと宣言した日だった。
参宮橋での出会いがなければ、自信を持って今の仕事に踏み出せなかったかもしれないと思う。
さてさて。
それでも続く、変わらぬ日常。おそらくはこれからも、選んだ道を進んでゆくのだろう。あなたも。
また、どこかでお会いできそうで嬉しいです。
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