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「投げられやすい石」

ハイバイ「投げられやすい石」
 日時:2011年2月19日(土)19:00開演
 会場:大野城まどかぴあ大ホール

 ハイバイの福岡公演。北九州での「て」、昨年の演劇フェスティバル参加作品「ヒッキーカンクーントルネード」に引き続き、3回目。今回の会場は、まどかぴあ大ホール。まどかぴあ大ホールは、プロセニアム以外に囲み舞台にしたり、挟み舞台にしたりといろいろ変形がきくのだけれど、今回は大ホールの舞台上に小劇場をまんま作っちゃった舞台上舞台。ぎゅっ~と濃密な空間が現れました。

 どうして「投げられやすい石」ってタイトルなのか、最後までよくわからなかったのですが、いろんな人のレヴューを読んで、石ころみたいなつまらない存在の人たちの、「投げられやすい“意志”」でもあったのかなぁ、と。あれこれ考えてたら、あのシーンにも、このシーンにも、いろいろと意味があるんだろうなぁと思い始めて、止まらなくなっちゃいました。

 ねたばれあり。

 ものがたり
 美大学生時代は「天才じゃ天才じゃ」と言われた佐藤君と、
 その友人で至って凡人・山田。ある日、佐藤が忽然と姿を消す。
 「海外に修行に行った」
 「あまりの芸術性の高さに発狂した」
 「もともといなかった」等の適当な憶測が飛び交うが、
 誰も事実を知らずに年月だけが過ぎる。
 そして2年後のある日、山田は佐藤に呼び出される。
 「会って、話したいことがあ る~ん」
 受話器越しの声に、不安にかられる山田。
 しかし行くしかない。
 約束の場所に着くとそこには変わり果てた佐藤の姿。
 何とか合わないで逃げ出したくなる山田!
 才能を持つ者、持たなかった者、失った者、の間を愛と打算がビュンビュン飛び交う、
 青春ラヴストーリー
 (チラシより)

 
 舞台に最初に登場したのは松井周さん。股間にぶら下げたおもちゃのバイクに乗っている、という珍妙ないでたち。観劇に当たっての注意事項などを話した後、「じゃあ、そろそろ始めます」と言って、芝居が始まる。

 古く錆びた鉄製のベンチとドア枠?のみの装置と、簡単な写真パネルで場面が変わる。シンプルな舞台が想像力をかきたてる。

 佐藤と山田が2年ぶりにコンビニで待ち合わせるシーン、岩井さんが変わり果てた佐藤の姿で、実にうれしそうに登場した。久しぶりに山田に会えるのがうれしいのか、あの衣装とメイクでお客さんのびっくりした顔をみられるのがうれしいのか。私はあの佐藤に度肝を抜かれました。

 続くコンビニ店員に万引きを疑われるシーンは、めちゃめちゃ痛々しくて、いや~な気分になるのだけれど、なんとも滑稽で可笑しい。しかもニット帽が落ちてまだらな禿頭が!さらにそれを必死で隠そうとしている様が!ごめん、笑える。ああ、これがハイバイの恐ろしいところだよなぁと思う。

 佐藤は不治の病で入院しており、やがて死期が近付いてきたことを悟って山田に連絡をよこしたのであったらしい。

 河原で石を投げるシーン。「右手で投げると見せかけて~左手で投げる!」
 意志に反して、どっちに飛んでいくかわからない石。
 思いがけず遠くまで飛んだかと思えば、なぜか後ろに落ちていたりして。

 友達なのに、あんなにべったり張り付いていたのに、変わり果てた佐藤に距離を置こうとする山田。ミキとの関係を正直に話すこともできず、できればこの場から逃げ出したい。

 カラオケボックスで、ミキに迫る佐藤、それを拒まないミキ。はっきりした意志を持たないお人形みたいな女。ああでも、“拒めなかった”のか。佐藤に妙に同情しちゃって。

 やがて最期の時を迎えたのか、倒れ込み、カラオケ店員(コンビニ店員にそっくりな、でもそれは死期の迫った佐藤の妄想だったかもしれない)に連れ去られる。
 そんな佐藤に、おろおろするばかりで何もできない山田。
 一方で「喝采」を熱唱するミキ。
 そして、ミもフタもないすとんとした終わり。わりと私好みでした。
 気がけば、舞台の向こうにはひろびろと大ホールの客席が。

 結局のところ、佐藤も山田もミキも、みんなただのダメな人間なんだろうね。どこにでも転がっている石ころみたいに、どこにでもそんな人間が転がっている。でも、そんな人間が愛おしくて、可笑しい。みんな、ダメダメなまんまでなんとなくこれからも生きていくし、いつか死ぬ。私も、変なプライドは捨てて、ダメな自分を笑い飛ばしながら死ぬまで生きていこうと思います。

 終演後は岩井さんのアフタートーク。「て」の時にもあったのですが、岩井さんが一人で舞台上に登場し、お客さんから集めた質問(あるいは感想)を延々と読み上げて、答える(あるいは答えない)だけの形式。なのに不思議とおもしろい。
 この物語を書こうと思ったきっかけとか、シンプルな装置についてとか、衣装の話とか、佐藤の病名は3つくらいあって日替わりだとか、ラストの歌は「喝采」しか考えなかったとか、佐藤のヘアスタイルは美容院でやってもらってるとか…。
 最後は「あ、時間そろそろですか?じゃあ終わります」と、あっさり終わるのも、なんだか岩井さんらしいなぁと思いました。

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