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「エンドレス サラヴァー」

あなピグモ捕獲団「エンドレス サラヴァー」
 日時:2010年11月20日(土)19:30開演
 会場:OFFOFFシアター

 あなピグモ捕獲団vol.32は、OFF OFFシアターでの公演。私にとっても初のOFF OFFシアターです。

 ものがたり
 書けない作家・大倉(貝谷聡)の家に、手土産を持った編集者・荒木(江崎穣)がやってくる。
 家には作家の妻と、純一郎と名乗る書生(為平康規)。しかし作家は、その書生に覚えはないという。純一郎は、本当にいるのか、いないのか。

 お茶を持ってくる妻。ふつうの、よくある顔の、だから顔を覚えてもらえない妻。
 煮詰まっている作家に、“汁がたりない”と、お茶の代わりに汁=知るを飲ませる。“知る”ことで苦しみ始める作家。

 1998年に上演された針穴写真館「ブンガク」(2010年春に再演)へのオマージュか。
 書けない作家とその書生、編集者、作家の妻。押し入れのセット、中央の文机。

 門には門番。
 作家の前に立ちはだかる人々。作家は門をくぐることを許されない。

 場面は変わって、大学の文学サークル“ガラパゴス”の部室。
 荒木、宇野(小澤貴)、まりえ(石井亜矢)、さとみ(遠藤咲子)、郁美(上田理紗子)、島田(力武修一)、よっちゃん(ますだようこ)、そして純一郎。部員たちは倉庫に、かつてこのサークルのメンバーだった大倉が書き遺したノートを探しているらしい。
 
 作家の部屋とサークルの部室を行ったり来たり、
 作家は、妻の顔がわからなくなる。“妻”を演じる女優が次々入れ替わるのがおもしろい。

 見つけられた大倉の、大学ノートに書き散らされた言葉。書いたはしから腐っていく表現。
 部員たちが消そうとしている大倉のノートを持ちだそうとする新入部員の弥生(杉本美豊)は新人編集者。書きなぐられた言葉をまとめるのは編集者の仕事。

 ”空っぽの自分”。何も出ててこない。
 そりゃそうだ。みんな空っぽ。何にもないところからは何も生まれない。”表現”は自分の中から何かが湧き出してくるわけじゃない。たぶんそれは、自分の外から入ってきたモノに対する自分の解釈でしかない。だからいろんなものを食べたり飲んだり見たり聞いたり読んだり経験したりしなくちゃ、きっと表現なんてできない。

 書けない作家の代わりに、書生が物語を紡ぐ。
 感想を求める。感想に左右される。

 締め切りが来るたびに、表現には区切りがつけられ、ばらばらになってちぎれて、疾走に飛ばされる。
 そんな中で、作家が書き始めるのは、“大学時代の文学サークルの思い出”という自伝的作品と、“書けなくなった作家の話”。2本同時進行らしい。

 充電の切れた携帯電話。電話線のちぎれた固定電話。
 鳴らないはずの電話に、編集者から連絡が入る。
 「締め切りは1週間後です」
 「締め切りは1年後です」
 ・・・

 締め切りに追いかけられて、表現を続けようとする。
 「お前の表現とはなんだ」
 門のところで問いかけられる。
 そのたびに足を止める。

 泣きたいのに泣けなかった。わざと余韻に浸らせまいとするかのように、急いだ展開、めまぐるしく切り替わるシーン。

 作家は書生の首を絞める。
 のんきに表現することを楽しんでいる書生。それはのんきに表現することをただ楽しんでいた、いつかの自分。でも、殺すことはできない。

 幾人もの誰かが立ちはだかる門を、彼は本当にくぐりたいのか、くぐりたいのに、くぐれないのか、それは門に立ちはだかる誰かのせいなのか。もう自分でもわかんなくなっちゃってる。たぶん心はきまっている。でも決心はつかないままに、きちんとサラバを言うこともできず、サラヴァーとごまかして、終わりなきサラバを繰り返している。

 肝心の時にちゃんと言葉で表現できない、本当に言いたいことを何一つ書けない、ぐちゃぐちゃの表現。それは私も全くおんなじなのだけれど。作家は作品を書くことで、ちゃんと決めることができたのだろうか。

 優柔不断で、いつもいろんなことをちゃんと決められずに、いろんなチャンスを逃してきた私だけれど、他人のああしろとかこうしろとかいう言葉に耳を貸すつもりはさらさらない。最後に決めるのはいつだって、ほかでもない自分だ。今自分がここにいるのだって、確かに自分が選んだこと。

 たぶん答えは決まっている。
 表現を続ければいい。どんな形でも。
 だって、そうするしか生きていけないのだから。
 いかにして続けていくかを、脳味噌絞って考えればいい。いくらだって方法はあるはず。
 私は“表現”にとりつかれたひとの行くすえを最後まで見届けるといつか決めたから、どこまでも追いかける。その声に耳を澄ます。

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