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「踊りに行かないで」

非・売れ線系ビーナス「踊りに行かないで」
 日時:2010年10月23日(土)19:00開演
 会場:ぽんプラザホール

 考えてみれば、ぽんで非・売れを見るのは超久しぶり。
 役者がほぼ入れ替わり、演出を木村佳南子が単独で担当(これは初めてのことらしい)、ドラマドクターに羊屋白玉(指輪ホテル)を迎え、これまでとはちょっと違う感じに仕上がっていました。
 ここ数年、停滞気味だなぁと感じられた非・売れ線系ビーナスですが、仕切りなおして新たなスタートラインに立った感じがする作品でした。

 あらすじ
 「踊りに行ってくる」
 そう言い残して彼女は消えた。ものすごくセックスが好きな女だった。家のことは全部僕がやっていたから、なにも困ることはなかったけど、毎日のようにしていたから、それがなくなって辛かった。でも、彼女はどうして踊りに行ったまま帰ってこないの?そんなことを考えているうちに、僕は踊りってものがだんだん憎たらしく思えてきた。芸術と、セックスと、なくてもいいはずのことにばかり、僕はいつも振り回される。憎んでもいい、叩いてもいい、愚痴ってもいい。
 でも、お願い。踊りに行かないで。
 (公式サイトより)

 “亀”と自己対話し、“歴史”ではなく、“恋愛”という個人的なテーマが中心のものがたりを舞台上に載せたこと、前作「爪先、向こう側」には結局登場しなかった父親が舞台上に登場したこと、そこに今回非・売れのさらなる成長というか変化がみえる気がしました。
 私はそういう個人的な内面のおもいから発生した物語が大好きです。舞台上に立ち現われた世界から作者の内面を想像すること、それは私の観劇の楽しみの一つだから。野田秀樹大好き(たぶん)な田坂くんの、歴史を背景に壮大な世界を捏造した作品もいいけれど。

 あらすじには“なくてもいいはずのことにばかり、僕はいつも振り回される”とあるけれど、セックスとかダンスとか、芸術=表現のほうがむしろプリミティブで、なくてはならないものであるような気がする。だってミツバチだって交尾するしダンスをするのだから。“家のことは全部僕がやっていたから、なにも困ることはなかったけど、毎日のようにしていたから、それがなくなって辛かった”って、結局カイダくんは、セックスがなくなったことが辛かったんじゃん!
 一方で、カイダくんの「彼女と一緒にいたい」とか「一緒にどっかに出かけたい」という願望や、コトブキに対する嫉妬(しかもあんまりちゃんと自覚できていないっぽい)や、ナツキに対するへんてこりんな同情や、あるいはナツキの、父親に対する気持ちとかオードリーに対する嫉妬とか、そういうものは非常に現代的で、そっちのほうがよっぽど“なくてもいい”感じがする。
 カイダくんは、芸術とかセックスとかに振り回されているのではなく、なくてもいい自分自身のめんどくさい感情に振り回されているだけなのだ。でもそれが人間ってやつだ。
 血相変えてナツキを追いかけてくるコトブキのほうがよっぽど本能的で、単純で、わかりやすい。それができないから、嫉妬したり、憎んだり、そっぽを向いたり。ああめんどくさい!でも、私は全くもってそういう超めんどくさい人間なので、カイダくんの気持ちがよおくわかります。

 好きな女、好きじゃないけど欲しい女、血はつながってるけどわかりあいたくない親、愛しいからわかりあいたい娘・・・。とても身近にある、だからこそなかなかに厄介な、解決しない人間関係の数々。わかりあえない、でもほんとうは誰よりもわかりあいたいと願っている人たちの葛藤が描かれていて、好感が持てました。もちろん、まだまだ十分ではなく、改善の余地も多くあるとは思うけれど、ヒトゴトとしてではなく、ふざけすぎもせずに取り組んだ作品だと思えました。

 冷静に考えれば、下ネタ連発なのですが、演出のおかげか、かなり上品な感じに仕上がってました。
 歌の場面は大好きなんだけれど、なんだかうまく物語世界に溶け込んでいない印象。もうちょっとうまく組み込めたらもっといいのかなぁと思いました。

 オードリーが「生活費」と言って置いて行ったお金で”手術“を受ける場面が最高でした。あの手術着は、あの場面のためだけの衣装だよね。亀(田坂哲郎)のあのヘアスタイルも、あの場面のためだけにあるよね。そこにかける情熱がすばらしい。

 あんなにほっそかった矢ヶ部くんが、肉布団一枚羽織った感じになってました。さらに肉布団羽織りました。相変わらず歌が…です。でもかっこよかったです。
 ぽちさんが相変わらずセクシーでした。
 14+の手島さんがいい感じでした。

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