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「春、夜中の暗号」「よかっちゃん」

「春、夜中の暗号」「よかっちゃん」
日時:2010年9月7日(火)19:00開演
会場:ぽんプラザホール

 福岡在住の脚本家、宮園瑠衣子さんの短編戯曲2作を、それぞれ違う演出家の手で連続上演。

「春、夜中の暗号」
 男の住む部屋には一年前から女の姿があった。二人で暮らすには狭すぎるアパート。平穏に見える二人の生活だが、ある日、かつての同級生が部屋を訪れ・・・。あと数時間で四月を迎える夜の物語。
 
 博多弁に会話によって進められる会話劇。劇団Hall Brothers幸田真洋さんの演出で。男(どん太郎)と女(中村公美)の関係は?二人の間に何があったの?いくつものなぞがなぞのまま、二人の間に入り込むネギシ(吉浦彰彦)との会話で物語が進んでいく。

 いわゆる静かな演劇。九州戯曲賞の審査で、松田正隆さんがかなり推したという。なるほど。
 
 演出は脚本に忠実な感じ。せりふの一言一言、役者の一挙手一投足が見逃せない。けれど、正直言って、仕事帰りの疲れた体は眠くなってしまった・・・。

 終演後、休憩時間に眠気覚ましのコーヒーでも飲むか…と思っていたら、舞台上に、Tシャツジャージ姿の男子2名と中村雪絵嬢が登場。我々観客はセミの鳴き声を練習させられる羽目に。
 キター!“観客参加型演劇”をされている、あなざーわーくすのわたなべなおこさんの演出だ。
 休憩時間はなく、そのまま「よかっちゃん」へ。

「よかっちゃん」
 二人は、今までにない熱を感じていた。蒸し暑さのせいか、苛立つ香里とその機嫌を取る隆。うるさく鳴り響く蝉と止まらない汗、そして休業した居酒屋「よしおか」。うだるような夏の日差しも、二人の失望をより一層大きくさせていた。

 さきほど蝉の練習を指導した男子が水泳パンツ姿で登場。風鈴役と風役らしい。おもしろすぎる・・・。
 観客は事あるごとに蝉として効果音を発せなければならない。
 
 カップめんを捧げ持った百合子(酒瀬川真世)や工務店の人(山口浩二)が客席から登場。びっくり!
 中村雪絵さんがかなり卑怯な感じ。中村節全開。やばい…おもしろすぎる…けど、最後まで彼女が何者なのかはさっぱりわからなかった。

 わりと早い段階で両親が死んでいることは予想がついたけれど、かなり暗くて悲惨なクライマックス。それをこの愉快な演出で見せた手腕に脱帽。眠気も吹っ飛びました。 

 個人的には百合子と姉のキャスティングは逆かなぁという気がしました。
 ぽちさんはかわいらしくて超色っぽい。
 酒瀬川さんも、もちろんセクシーなんだけれど、どちらかといえばさっぱりした感じで、弟はあんまり百合子に心惹かれていないように見えた。だから結局弟は姉とラブラブな感じになっちゃってたんだと思う。
 

 アフタートークを聞いていて、松田さんはわたなべさんの演出に納得がいっていないように見えた。まぁ確かにそうだろうなぁ。
 "演劇”と一口にいっても、さまざまな形態があるように思う。
 プロセニアム舞台で上演される芝居を観客が客席から覗き込む、という形態は演劇の王道だけれど、個人的には舞台がぴっちりパッケージされて、観客はただそれを覗き込むだけの形態であれば、テレビや映画とどう違うのか、と思う。
 観客参加型の演劇はそれと対極にあるものだけれど、今後演劇がより多くの人に共有されていくために、演劇の形態の一つとして絶対に欠かすことがができない視点だと思っている。演劇は”観る側””演る側”があるけれど、その間にはっきりとした線引きがあるわけではなく、むしろそのあいだにあるものこそが”演劇的”なのではないかと思うのだ。ふと役者が観客に語りかける瞬間、それこそが演劇の醍醐味だ。
 
 観客参加型演劇では、観客は効果音となり舞台装置となり、時には役者にもなる。
 観客はあくまでも観客である以上、役者として舞台に乗せられることはどうかと思う。ただ、あなざーわーくすの芝居ではふだん観客席と舞台を一体化して観客を舞台に乗せた状態で上演されたり、居酒屋で上演されたりしていて、また、参加したくない人は参加しなくてもよいようになっているみたいだ。今回のぽんプラザホールでは連続上演という都合もあって、そういった舞台の作り方ができず、できの悪い観客巻き込み演劇に見えてしまったかもしれないが、正しいやり方でやればちゃんと意味がある手法だと思う。特に教育とか研修、あるいはコミュニケーションを必要とされる現場では非常に効果的な手法だと思っている。ただの観客である私だけれど、自分と演劇をつなぐ、とても重要な視点でもある。すでに福岡市文化芸術財団が中心となって小学校でのWSなども行われているようだけれど、今後もっともっと発展していって欲しい分野だ。

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コメント

劇評賞、受賞おめでとうございます。

もう一人は私です(笑) あははは!

これはぜひとも、一度お会いせねばなりませんね!!

投稿: 観世 | 2010/09/19 21:30

>観世 さま
 コメントありがとうございます。
 そして、劇評賞受賞おめでとうございます!
 お会いできる日をほんとうに楽しみにしていま~す

投稿: SUN CHILD | 2010/09/25 23:19

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