「アームストロング・コンプレックス」
甘棠館show劇場設立10周年記念公演
劇団ショーマンシップmeetsネクストジェネレーション
「アームストロング・コンプレックス」
日時:2010年7月24日(土)15:00開演
会場:甘棠館show劇場
甘棠館show劇場がオープンして、10年になるんですね。
非・売れ線系ビーナスも万能グローブ・ガラパゴスダイナモスも、ついでに劇団ぎゃ。も、みんな甘棠館show劇場が旗揚げだったんだって。
ちなみに私の甘棠館デビューは…覚えてない。たぶんクロサイだったと思います。
で、甘棠館10周年記念として、福岡の若手演劇人を集め、2006年のE1グランプリ参加の劇団どデブの作品(未見)を上演。田坂哲郎・脚本、木村佳奈子・演出。
いや~久しぶりに"芝居を見た"という感じがしました。おもしろかったです。
劇場に入ってまず、装置が素晴らしい!下手に垣根と庭。上手に縁側のある和室。
もちろん(!?)兄弟舟の仕事。
ものがたり。
江戸後期。画家・月岡芳年(川口大樹)は、妻・お琴(中村公美)と弟子・年景(樗木慎也)とともに、雨宮家に間借りしている。
月あかりの美しい夜、家の座敷で、ヘンな兜をかぶった芳年が、兄弟子の落合芳幾(鶴賀皇史朗)に言う。
「俺はね、兄さん。見えないけれどもそのにある、向こうっかわを見たいんです」
「誰も見たことがないものを見たい」。たとえば月の裏側。
時は流れて、明治末期。同じく雨宮家の縁側では、画家・冴木宙造(椎木樹人)がやる気なく絵筆を握る。2階では同じく雨宮家に世話になっている若い画家・明星秀一郎が、静(ぽち)をモデルに、裸婦の絵を描いているらしい。垣根の外、なかを窺うものがいる。彼は、三田光一(松野尾亮)。超能力者だというのだが…。
”月の裏側が見たい”というモチーフには、ん?と思ったけれど、まあそれは本質ではないのでいいです。
いろんなところから集まった役者さんたちが、それぞれにできることをしていて、トータルでいいものに仕上がっていたと思います。
まず、川口くんがカッコよかった。目がいい。でも、狂気の画家としては、ちょっと弱い感じもした。もっとも、あの狂気の画家を演じられる役者が福岡にいるかと言われると、思いつかないのだけれど。役者川口には、前々から注目していて、いろんな演出家とやって成長してほしいと思う反面、作・演出かとの両立は難しいだろうと思う。
松野尾くんと椎木くんは、久しぶりにちっちゃい会場で観ると、ちょっとづつうまくなってるんだな~という感じがした。
鶴賀皇史朗さんと林雄大さんは、なんか色気がある。
ぽちさん好き。声がいいんだなぁ。
お絹さん(長尾知美)はうざい女なのに、嫌味にならず、かわいらしい。ラスト近くで、ヘンな兜にまじないをかけちゃったりして、ああ、そういう伏線でしたか(笑)
音楽はちょっと変わった感じ。
ほとんどの若手劇団が音楽をうまく使えていない印象があるのだけれど、それに比べればちょっとは"音楽”を意識したんじゃないの?個人的にはわりと好きでしたが、演出家の趣味と音響さんの趣味が全く一致していないんじゃないかという印象。
ただ、暗転長すぎ(私は鴻上尚史の「暗転は芝居を殺します」という言葉を信じているので、暗転はもれなく嫌いなのです)。セット替えの事情があるだろうけれど、もうちょっと短くしてほしいところ。いかにも"今がんばって替えてます!"という長さだった。
それに関連して、気になったのが、静が幕末にトリップするシーン。
あれは静が幕末にトリップして、芳年と出会う(それを子ども=明治にはおばあちゃんが目撃する)、というシーンだと思うのだけれど、セットも小道具も明治のまんまだった。あそこまで、あれだけ暗転長くして、セットを替えていたのに、結構カギになるあのシーンだけ替えないってどうなんだ?そもそも、静と芳年が出会うこのシーン、物語全体を通してカギになるシーンだけど、いかにも唐突で、え~?って感じ。
ショーマンシップは見たことがないのだけれど(ホントすみません)、役者さんたちに安定感があり、若手を支えている感じがした。この公演がここまでのものになったのは、仲谷さんをはじめ劇団ショーマンシップの方々のおとなの仕事のおかげではないかと思いました。
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コメント
おひさしぶりです!
私も見に行きましたー。
感想もちょっと書いたので、遊びに来てください♪
暗転が長い&そのわりに変わってない点、同感です。
静のタイムトリップのシーンのことについても。
詰めが甘いというか、もう2段くらい飛躍してくださいというか、
そういう物足らなさがところどころに(特にkeyになるシーンに)見受けられるような気がします。
あの掛け軸もいったい・・・・なんだったんでしょうか?
意味深なわりにオチが・・・・あるようなないような(笑)
人様のブログで酷評コメントすみません。
役者さんは皆さんなかなか良かったですよね!
各劇団のイイトコどりで、おいしかったなと思いました(^^)
8月は興味深い舞台が多いですが
どうもなかなか見に行けそうにありません(;;)
投稿: 観世 | 2010/08/02 14:26
観世さん、こんばんわ!コメントありがとうございます。
いろいろ書いてますが、私は満足して帰ってきました。
静がトリップするシーンでは、川口くんがいとも簡単に静を抱きしめてしまったりするから、「いや~ん、やめて~」と思ったのが不満の最も大きなところかもしれません(はい、芝居と現実がごちゃまぜです)
掛け軸は、幕末と明治をつなぐキーアイテムであり、笑わせネタの一つだったんでしょうね。子どもの下に敷かれていた紙のしみと、掛け軸の月がとても同じものとは見えなかったのは残念でしたし、どうせなら芳年が山水?を書き足す場面があればよかったかも。
8月下旬~9月上旬は、注目の舞台が多すぎです。私もあまり行けそうにないので残念です。
投稿: SUN CHILD | 2010/08/02 23:09