「イヌの日」
阿佐ヶ谷スパイダース「イヌの日」
日時:2006年12月20日(水)19:00開演
会場:ももちパレス
「イヌの日」って、腹帯を巻く日ではなくて、英語で”Dog Days”のこと――7月初めから8月中ごろまでの盛夏の頃をこう呼ぶんだそうです。
これですよ、これ!
極悪で、極端で、性と暴力に満ちた、狂った世界。なのに、そこに純粋な愛と孤独とひとの弱さを感じて、泣けて仕方ありませんでした。
ダメなひとは絶対にダメな世界だと思います。
それでも、平日の夜にももちパレスを満杯にできる魅力が、そこには確実にあるのです。
伊達暁さんが最高にかっこいい。中津は一度も弱いことを言わないし、最初から最後まで暴力的で、幼稚で、最低なやつです。でもいとおしい。彼がどんなに母親を愛しているか、麻里絵を愛しているか、広瀬を信頼していたか、孤独だったか、よく伝わってきた。彼を許してしまうのは、極端な形で描かれてはいるけれど、多かれ少なかれ彼と同じ思いを私(たち)がどこかで抱えているからではないだろうか。
美保純さんの母親は、母親じゃなくてただのわがままな女。あれは「母性」ではないと思う。彼女には母性のかけらもない。目の前のかわいい息子のことが大好きで、だけどどうしていいのかわからなくて、身を任せるわけにもいかなくて、息子には冷たくして、他の男と寝る。だけどそこにも、愛したいのにどうしていいかわからない苛立ちや、何人の男に抱かれても満たされない孤独や、息子の監禁を許すことしかできないニセモノの愛情とかを感じて切なかった。息子に、濡れ衣を着せられてしまうけれど、ああいうかたちで罰を受けることしかできなかったのだと思う。
最後まで、何の救いも悔恨も許しもなく、中津は罰を受けることもなく、それでも私は全然嫌~な気分になることなく劇場を後にした。なぜだろう。
理由のひとつは、監禁されている側があまりにも無邪気で、幸せそうに見えたからだろう。落ち着いて考えれば、そんなことはありえないし、絶対に許されないことなのに、まんまと騙されてしまった。まあ、それこそが芝居の醍醐味。
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